ピリオド
今日は外が賑やかだ。
鉄道、空港、高速道路などが全て人で埋め尽くされている。
私はそんな人ごみに溶け込んでいきそうになる。
なぜ、こんなに人で埋め尽くされているか。
――そう、今日で地球滅亡まで、あと1日だから。
3日前、急に宇宙について研究していたロシアの学者達が大騒ぎしながら大統領の元に駆けつけた。
当然の様に警備員に捕まったが「地球が危ないんだ!」と言うと大統領はその話を聞いてくれた。
聞くと、大統領も目を丸くして急いで会見に出た。
会見が終わるとすぐに他の国でも会見が開かれ、すぐに世界中に広まった。
どうやら、私が聞いた話では地球の公転と同時に地球とは逆の方向に公転していた星が地球のずれにより衝突するらしい。
言われてみれば、確かにデカイ星が空に浮かんでた様な気がする。
でも、私にはそんな時間も残されてなかった。
地球滅亡がわかった時には私は口を抑え走馬灯の様にいろいろな思い出が蘇ってきた。
それも、そのはずだった。
地球は後3日だからだ。
私は飛ぶように家を出ると、まず母の家に行き最後の挨拶をした。
母は私を抱きしめるとおお泣きをした。
私も泣きたかった。
でも、私が泣いたら母を支えられない。
そう、思った・・・だから泣かない。
期限が後2日と迫ると、私は寝る暇もなく親友と会う約束をして一日語り尽くした。
喉がカラカラになるほどに話したのはこれが初めてだろう。
親友の顔がもう見れない。
でも、皆同じ思いをしている。
だから、泣かない。私だけ泣いたらおかしいから。
でも、実際のところは周りの人は皆おお泣きだった。
涙が地面に落ち雨が降ったあとの様に地面が濡れている。
不思議な世界に迷い込んだようだ。
――そして、今残された時間が1日
今日は最後であり、そしてこの三日間で一番大事な日。
彼氏と会う日だ。
空には確かに大きな星が浮かんでいた。
1分、いや1秒でも長く彼といたいという気持ちから私の足は自然に早歩きどころか走っていた。
待ち合わせの場所に私が着いたころには彼は携帯をいじくって待っていた。
彼も私と同じとうに別れのメールを打っているのだろう。
「ヒロキー!」
私は大きな声で彼の名前を呼んだ。
本当は苦しくて辛い声が出そうだった。
我慢した、でも。
「おっ、ミカ」
彼も元気いっぱいの声で返す。
「今日はどこ行くー」
私は彼の腕に飛びついた。
――甘えたい。
その気持ちが強かった。
「んー、とりあえずカフェに行くか」
「そうだね!」
私と彼はカフェに着くとコーヒーを飲みながら話していた。
「まっさかなー地球が滅亡するなんて」
彼は冗談の様に言った。
「これも、運命なのかな・・・」
切ない気持ちになり、私は彼から目をそむけた。
「どうしたんだよっそんな暗い顔して」
当たり前、暗い顔するのが当たり前。
「だって、ヒロキと一緒に居られるのも今日しかないんだよ」
「そんな、大丈夫だって」
「そうね・・・ねぇねぇそろそろヒロキん家言っちゃ駄目?」
急な言葉に少し彼は戸惑ったがすぐに頷いた。
彼の家に着いた時にはもう午後の8時を過ぎていた。
テレビを付けると、どのチャンネルも臨時でニュースをやっていた。
ニュースの内容は地球と星が衝突する時刻がわかったと言うことだった。
『大変、失礼します。地球滅亡の時刻は明日ではなく今日の午後10:13分だということです』
私は今さっき時計を見たばかりなのにまた時計を見た。
「8:27分・・・」
絶望に追い込まれた。あと、2時間も残されてない。
「何でよ!!」
思わず、私はテーブルを叩いた。
「そんなに怒るなって」
「怒るなってヒロキは今どんな状況だかわかってるの!!」
「わかってるさ。わかってるよ!!」
「じゃあ、何でそんなこと言えるの!!」
怒鳴り声が彼の家中に響いた。
私が我にかえった時には、もう手遅れだった。
喧嘩をしてしまった。
しばらくの間、私と彼は黙ったままだった。
もう、その時には残された時間は20分しかなかった。
どうすればいいの?と私が考えていると彼が口を開けた。
「ゴメン」
彼の言葉に迷わず私は言った。
「いいよ。私の方こそゴメンね」
「悪かったのは俺だよ。それより、最後を見届けるから外に出ないか?」
「いいわよ」
外に出ると息が白く輝き優しい光が街を灯していた。
時計は10時9分を挿していた。
「あと4分ね」
そう、私が言うとしばらく沈黙が続きいきなり彼が抱きついてきた。
私はされるがままになってただ立ち尽くしていた。
ゴゴゴゴゴッ
星がすぐそこにあった。
熱さが伝わってくる。
やがて、ビルが崩れる音がした。
地球にピリオドを打つ時が来た。
私の命にピリオドを打つ時が来た。
―――――だけど、彼と私の恋には死んでもピリオドは打つ事は無い。
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