第1章━〔4〕
「どういうことですか将軍様!!」
将軍であろう人物を攻め立てる兵士。
鋭い目をしたその兵士の顔には不安と怒りが浮かび上がっている。
「すまない…だが、今日は…」
済まなそうにクラウスは目を薄めた。
「じゃあ、明日すぐにまた攻めるとでもいうのですか!!一度崩れた戦力はすぐには戻りません!!」
そんな、当たり前のことはクラウスはわかっていた。だが、レクス軍を攻めることはクラウスにとっては、辛いことだった。
辛さは前からあった訳ではない。
つい、最近戦闘中に生まれたものだ。
「大体、何であの時レクスの将軍を殺さなかったのですか!!所詮は女ですよ!!」
「所詮…」
目を光らせるとクラウスはその兵士の首を掴んだ。
「悪いんだが、私の前であの将軍のことを悪く言うのは止めたほうがいい。首が飛ぶぞ」
「あ…あぁ…」
光った瞳に飲み込まれそうになった兵士は声も出ないほどの恐怖に襲われる。
「まぁ、わかってくれればいいさ。引け」
命令を受けるとネズミがネコから逃げるかのように走っていった。
「らしくないな」
兵士が逃げていったドアから姿を現したのはフェイトだった。
「そうか…」
「さっきの間抜けな兵士じゃないが、何でお前は戦いを止めたんだ?」
「問い掛ける前に態度を直せ。お前は俺の下の立場なんだ」
いつもはフェイトに命令をしたことのなかったクラウスが突然フェイトに命令をし始める。
「どうしちまったんだよ。お前おかしいぞ?」
それでも、フェイトはクラウスは冗談を言っているのだろうと思い命令を無視した。
「なぜ、命令を無視する!!将軍の命令は絶対だぞ!!!」
獣の様な巨大な声でフェイトを怒鳴りつけた。
「すまな…すみませんでした。ですが、貴方のとった行動は絶対に間違っているものだと…」
「俺のとった作戦は今まで間違ってたことは無いはずだ。自信はある…」
「そうですか…それでは、また攻める時になったら」
頭を下げるとフェイトはクラウスに背を向けた。
「最後にひとつ、俺もあなたと同じだけの戦闘力はあります」
言い残すとフェイトは自室に戻っていった。
「はぁ、これから同盟を求めるか…それとも戦って…」
深いため息をつくとクラウスは頭を抱える。
「だが、同盟なんか求めたら、民が黙ってはいないだろう。民の力によって我が軍が潰されることもある」
――そう、クラウスはレクスの将軍「アリエ」に恋をしてしまったのだ
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