第2章━〔2〕
ワタルの声が廊下中に響いた。
周りの者達が笑う。その笑いを見て見ぬふりをして教室の中に入った。
「廊下の気分は?」
教室に入ったとたんに聞いてきたのがクラスメイトのヒロユキ。
「あー別に・・・」
ワタルは適当に答え自分の席に戻る。そして次の授業の用意をして席に座った。
「次の時間も立たされるんだよ。」
リサはワタルの机の上に座って来た。
「そんなもん、どうでもいい。」
ワタルは強気に言った。ワタルの態度を見るとリサは手で口を抑えながら笑った。
「ワタルらしいね。」
「まぁな。」
こんな会話をしている二人が魔法使いだなんてクラスメイトは予想がまったくつかなかった。
それ以前の問題に魔法使いがいるなんてこともわからなかった。
ワタルも最初はそうだった。ワタルは自分が魔法使いになるまでを思い出していたら悲しみと嬉しさが込み上げてきた。
そして、いつの間にか笑いを作り上げていた。
「人には一人で笑って大丈夫?とか言ってたのにワタルこそ大丈夫?」
リサの声がワタルを現実に戻した。
「ああ・・・いや、ちょっと夢の世界に入り込んでた・・・」
ワタルは人のこと言えないな、と言わんばかりの表情を浮かべた。
そんな、二人を魔法使いだとは感じさせない会話を学校ではしていた。
魔法使いだとばれたら、ワタルと同じ様な選択をもらわなければならないからだ。
二人は他の人を極力巻き添えにはしたくなかった。それは、魔法使いとして当たり前のことだった。
だが、人々は運命というなの避けられない事に巻き込まれ魔法使いを見てしまい自分も魔法使い、あるいは死ぬと
いうことになってしまうのだった。死ぬのを嫌がって魔法使いになる。だが、戦いが嫌で逃げる人間も多い。
そして、逃げていく人間は闇の住人に殺されてしまう。これも運命だった。
リサはこの世でおきることをすべて運命ととらえている。むしろ、そうとらえなくてはならなかった。
だが、リサは誰にもすべてを運命ととらえる訳を話さなかった。
考えるだけでも辛い事だからだ。考えると涙が瞳に溢れ止まらなくなる。
そして、絶望を味わう。
そして、苦しみを味わう。
そして、死にたいという気持ちを味わう。
リサは悲しい過去を捨てて今生きている。
今、ワタルと笑っている。
今、学校に来ている。
今、闇の住人と戦っている。
そして、今─
チャイムの音でリサは我に帰った。リサはいつの間にか涙が溢れていた。
「リサ、大丈夫か?」
ワタルが心配そうに聞く。だが、リサは笑って答える。自分が強いと言う所を見せたいから。自分は弱くないから。
「ううん、大丈夫。それより今日も帰りに家によって特訓しよ。」
「わかった。」
ワタルが軽く返事をすると、リサは嬉しそうに笑い自分の席に戻った。
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