第2章━〔6〕
次の日、二人は何事もなかったのかの様に学校でも接しあう。ワタルはその事に疑問を感じたがあえてその場では言わなかった。
だが、いつもと違う所が一つあった。必死に勉強をしているところだ。
「これじゃあ、特訓どころじゃない。勉強だ。」
「そうね、これじゃあ赤点確定だわ。」
ペンの動く音が激しく聞こえるほどだった。
「これじゃあ、五日間は徹夜だな・・・」
「五日間も!!私なんか一日も徹夜はする気なかったけどな・・・」
「馬鹿だから・・・」
ワタルの声が急に小さくなった。そんなワタルをリサは笑いながら見つめていた。
「ごめんね。でも、やれば出来るよ。」
「じゃあ、やってないから出来ない・・・」
ますます、ワタルは落ち込んでしまった。リサはどうすればワタルが元気になるか考えた。
「そうだ!私がテストの時、指定した人を自由に操れる呪文をワタルにかけてテストやって上げようか?」
「いやっ、いいよ。リサには迷惑かけたくないから。」
「ありがとう。」
二人が猛勉強をしているとチャイムが鳴った。だが、リサはワタルの声、ワタルはリサの声しか聞こえていなかった。
先生がドアを空け、教室に入ってきた。だが、その音にも気づかなかった。
「起立。」
号令係の生徒が号令をかけようとする。だが、リサとワタルだけ立たない。
すると、先生が二人の名前を呼んだ。だが、やはり気づかない。
今度は号令係の生徒が二人の名前を呼んだ。だが、気づかない。
これには、さすがに先生も頭にきて机を叩いた。ワタルとリサはその音に反応した。
ワタルとリサは周りが立っていることに気づき慌てて立ち始めた。
「令。」
「「「おはよう御座います。」」」
聞くと平和を感じられる声が教室に響く。
「着席。」
ワタルとリサは席につくとすぐにペンを持ち勉強を始めた。
「えー、緊急の知らせが入った。テストは三日はやめて四日後になった。」
クラス中からブーイングが巻き起こる。だが、一番大きな声でブーイングを入れたのはワタルだった。
「はーふざけるなー死ねー」
ワタルの声は確かに先生の耳に届いた。
「死ね・・・だと・・・お前は内申書はないと思え!!」
先生が怒鳴り散らした。怒鳴られるとワタルは肩を落とした。
(内申書が駄目でどうするんだよ・・・)
「まぁ、今回のテストは出来るんだろうな・・・期待してるぞ・・・」
その先生の言葉がワタルにとどめをさした。
「できる・・・わけ・・・ねぇ・・・」
ワタルは弱弱しく言うと気を失ってしまった。
教室中に笑い声が響いた。
◆前の話に戻る
◆次の話に進むイグゼクス・話集に戻る