第2章━〔8〕


放課後、ワタルはリサに行って謝ろうとした。だが、リサの姿が見当たらない。
(そういえば、体育館の倉庫で秘密の話があるって言ってたな。)
ワタルは体育館に向かった。ワタルが体育館に着くと体育館からボールが壁にぶつかる音がした。
ワタルは気になって体育館を除いた。すると、倉庫からボールが転がってきた。
それも、ひとつではなかった。何個もだった。ワタルはおかしいと思い様子を見ることにした。
すると、倉庫からアキの怒鳴り声が聞こえた。
「何でアンタがワタル君と仲良くしてんのよ!!!ワタル君は私の物なのよ!!」
それは、演劇の練習なのではなく本気で言っていた。ワタルの心は揺れた。
(長瀬が俺のことを・・・)
「そうよ、アンタなんか!!!」
続いて、ミキが怒鳴った。
「キャア!」
軽い悲鳴が聞こえた。そして、ボールがぶつかる音が再び聞こえた。ワタルの心はどんどん痛んでいく。
(リサが・・・助けたい・・・でも、今助けたら・・・後で余計いじめられる・・・)
ワタルは助けるのか、助けないのか決断が出来なかった。普通なら助ける。
だが、ワタルは後のことまでしっかりと考えて決断をした。
(リサ、がんばれ・・・俺が助けても後でひどい目に合うだけだ・・・)
ワタルは体育館から立ち去ろうとした。だが、立ち去れない。自分で出した決断を自分で否定し始める。
(いやっ、助けないと・・・駄目なのか・・・)
その時だった。
「あんたなんて、私のワタル君を奪ったあんたなんて・・・殺してやるわ!!」
アキの怒鳴り声がワタルの耳に響いた。そして、悲鳴が聞こえた。
「キャア!!!」
(首をしめられているのか・・・このままじゃ死んじゃう・・・助けなきゃ・・・リサが死んじゃう!!)
「おいっやめろ!」
ワタルは大声を上げてアキ達を取り押さえた。
「何でこんなことをするんだ!!リサが・・・リサが死んじゃうだろ!!」
ワタルは怒鳴り散らした。だが、アキ達からの返事はない。
「とにかく、ここから出て行け。」
ワタルはそういって強引にアキ達を体育館から追い出した。そして、座り込んで泣いているリサに手を差し伸べた。
「立てよ。」
その手を握りリサは静かに立った。そして、苦しそうに言った。
「ワタル・・・」
ワタルはリサの手を離さず強く握った。
「どうしたの・・・ワタル・・・」
震えた声でリサは言った。
ワタルはその質問に口では答えず行動で答えた。ワタルはリサを強く抱きしめた。



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