第4章━〔2〕


リサはその夜、猛特訓をしていた。
特訓内容はすさまじい密度でしかも時間が長い。普通の人だったら倒れてもいいくらいだろう。
だが、リサはその特訓を順調にこなしていた。
なぜなら、救いたいという気持ちがあるからだ。
リサは人を思う気持ちがあれば何でもできると思っていた。
だが、今日はそれが違うということを思い知らされた。
ワタル、そしてアキを守れなかった。リサの心にそのことが深く傷として残っていたのだった。
だから、明日その傷を癒す。いや、癒すというよりも無くす。
リサはそう決心をしていた。
そして、自分の実力も思い知った今やることは特訓しか無いと考えたのだ。
リサは大汗をかきながら特訓をしていた。
的に的確に呪文をあてる練習。接近されたときの対応の練習。新呪文の練習。
だが、どの練習もすぐにできる様なものではなかった。
それでも、彼女はこなした。休まずに気を抜かずに。
そして、リサはベテルギウスの先頭データを頭に染みつけておいた。
黒い液体は魔力封じの呪いの効果がある、などをしっかりと頭の中に入れておいた。
だが、リサは完璧な特訓をしてもまだ頭に残ることがあった。
それは、"魔法使いに感情は必要なのか"ということだった。
そもそも、魔法使いはイグの野望を阻止するための"兵器"であった。
なので、戦闘をする為だけにある存在だった。
リサが今まで出会った魔法使いも冷血で戦闘中は言葉を発しない人達ばかりだった。
だが、ワタルは違かった。ワタルは戦闘中も笑ってくれた。
でも、それは単にワタルがまだ本当の魔法使いというものを知らないからであった。
なので本当の魔法使いというものを知っていて感情を戦闘中に表に出すのはリサだけであった。
リサはそんな自分を甘いのかなと思う。
でも、今までだって十分それでやっていけていた。
でも、いつの日か感情を表にしたのがあだとなって。
リサはいくら考えても感情が必要かということに関してはわからなかった。
だが、今までは感情を表に出してもやっていけてるので一応感情を表に出してもいい、という考え方をしていた。
リサは特訓が終わるとじっくりと休みを取るためすぐにベットに入った。
そして、心を休ませ体を休ませた。
布団の暖かさがリサを包み込みリサを夢の世界へ運んでいってくれた。
そして、その横には傷ついたワタルとアキを横にさせていた。
二人の顔は完全に闇に侵食されていたがリサには二人が笑っているように見えた。
嬉しそうに笑っているように。



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