第1章━〔2〕



ワタルがトボトボと歩いていると今度は友達のカズキに会った。
「よーワタル。どうしたんだ、その暗い顔は?」
「いや・・・。なんでもねぇ。」
「はっはーん、見えたぜ。呼び出しだな。」
ワタルはコクンッとうなずいた。
「おいおい、テンション低いぞ。俺まで低くなっちまうじゃねーか。」
「じゃあな。」
ワタルは適当なところで適当に話をきった。
「本当に友達付き合い悪いやつだなー」
ワタルはそのことを自分でも自覚している。だから、否定をしなかった。
職員室に近づくにつれて重い空気がただよってくる。
タバコの匂いと香水の匂いが匂ってきた。
(最悪な組み合わせだな・・・。)
心の中で呟いていると職員室の中から補習の担当だった先生が出てきた。
(やべっ!)
ワタルは何故か隠れてしまった。手には竹刀を持っている。
(ありゃー見つかったら酷い目にあうだろうな・・・でも行かなくては・・・。)
先生は人間が軽く飛んでしまいそうな鼻息を吹いてワタルのことを待っていた。
(この様子じゃ、もうしばらく隠れていたほうが・・・)
瞬間、ワタルの携帯電話が鳴った。可愛い声をした女の子の声が響き渡った。
(しまった。せめて着うたはやめとけば・・・)
ワタルは着うたを止めようとした瞬間、竹刀が手に打ち付けられた。
「痛っ!!」
「よー、こんな所で何をしていたんだ?すぐに来いと言ったはずだぞ?」
「まぁこれにはいろい・・・」
「言い訳はきかん!!!もう耐えられん。廊下に正座1時間だ!!!」
怒鳴り声が職員室のドアのガラス部分に伝わって揺れている。そして床からワタルの足にも伝わってきた。
しびれる様な感覚が体全体、特に耳に伝わりワタルはひるんだ。
瞬間、竹刀が足に一発、顔に一発飛んできた。ワタルはぶっ倒れた。
「正座しとけよ!!!!逃げたらこれだぞ!!!」
そういって首を切る真似をした。これにはワタルも寒さを感じ先生の言うことに従った。
それからワタルは深呼吸を何回かし、静かに目を閉じ寝る体制に入った。
だが、10分たっても寝れない。それどころか時間がたつにつれ余計、寝れなくなってきている
(やばいな、もうきつくなって来た。これで一時間も持つか・・・。)
ワタルが辛い顔をしているとリサが下駄箱から走ってワタルのそばに来た。
「心配だから様子を見てたら1時間だなんて。私も一緒に正座するよ。そうすれば辛くないでしょ。」
「いやっ、辛いはかわらんよ・・・。」
「そうゆう事じゃなくて一人より二人の方が気が楽でしょ。」
「わからんな。」
「まぁいいよっ。」
そんな会話をしているとワタルはいつのまにか寝てしまった。
「ほーらね。私がいたから寝れたじゃん。」
とたんに、リサは何かを思い出したかの様に立ち上がり下駄箱を飛び出した。
(早くしなくちゃ・・・ここが!!)
リサは全速力で走り校門を飛び出して学校の前の"光華中学校前第四公園"に向かいさらに走り出した。


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