第1章━〔4〕


(このままじゃ・・・ワタルが死んじゃう。最後の力を振り絞って・・・)
「シグナル・・・」
リサがつぶやいた瞬間、天から化け物に向かって雷が落ちてきた。
その雷は槍となって化け物を貫いた。
爆音と爆風がワタルを襲った。
「うっ・・・。何だこの風と音は・・・。」
ワタルは目を空けた。
「え・・・。化け物がいない・・・。」
そこには化け物は跡形もなく消えていて、ただ倒れているリサだけがいた。
「リサ!!!」
ワタルはリサの方に駆け寄った。
「リサ!!リサ!!」
必死でリサの体を揺すった。
「そんな・・・に揺すらない・・・でよ・・・気持・・・ち悪く・・・なるじゃ・・・ない。」
「リサ!!!大丈夫か!!!」
「大丈夫・・・よ・・・一晩休めば・・・こんな・・・傷・・・とり・・・あえず、私の・・・家・・・まで・・・私を・・・運んで・・・。」
「わかった。」
ワタルの瞳にはいつのまにか涙があふれていた。その涙がリサの頬に落ちる。
「泣くん・・・じゃ・・・ない・・・わよ・・・大・・・丈夫・・・だから・・・」
ワタルはリサを持ち上げると急いでリサの家に向かった。
涙が止まらない。こんなリサを見るのはワタルにとってはとても辛いことだった。
だがワタルは強かった。涙をふいてひたすらリサの家に向かって走り続けた。
17分ほど走り続けるとリサの家についた。
「リサ!!ついたぞ!!!」
「ありが・・・とう。・・・じゃあ・・・ベットまで・・運んで・・・」
「わかった!!!」
ワタルは急いでリサの部屋に入りリサをベッドに寝かした。
「もう・・・いいわ・・・帰って・・・」
「でも!!!まだ!!」
「詳しい・・・話は・・・明日・・・。今日は・・・帰って・・・」
「わかったよ・・・じゃあな・・・」
ワタルは静かにリサの部屋を出て行った。
トボトボと外を歩きながらワタルは考えた。
(何なんだったんだろう。あの化け物・・・それにリサは一体何者なんだ・・・。)
ワタルは自分の家に帰るとすぐにベッドに入った。
(考えるのはやめよう・・・今日はこのズタズタになった精神と体力をゆっくり回復させよう。)
そう自分に言い聞かせ静かに目を閉じた。



◆前の話に戻る

◆次の話に進む

イグゼクス・話集に戻る