第1章━〔9〕


真剣な眼差しで杖を構えながらリサは言った。
「じゃあ、うちまくっていいんだな?」
「打ちまくれるならね。」
ワタルは魔法の書を開き、攻撃魔法のページを見た。
「よしっ、これにするか。ウォーター!!!」
呪文を唱えると杖から水が噴射された。水はリサのを狙い飛んでいく。
水の速度は相当なもので当たったら臓器がつぶれるであろうというものだった。
だが、水が飛んできてもリサは平然としていた。
「リサ!!危ない!!」
ワタルは危機感を感じリサを助けようと走り出した。
「どこが危ないの?バリアー!」
リサの体が丸いガラスの様な物で包まれた。そのガラスは美しく光りを放ち水を相殺した。
「なっ・・・」
走っていたワタルの動きが止まった。
「だから、なめないでって言ったでしょ。次の呪文に入って。」
「わかった、じゃあこれで!!ビーム!!」
呪文を唱えると杖の先が光だし、高熱の粒子の塊のビームが飛んでいった。
そのビームはさきほど出したウォーターとは比べ物にならないほど速度が速かった。
「ミラー!!」
リサが呪文を唱えるとリサの正面に大きなガラスが現れた。
ビームはそのガラスに当たると反射してワタルの方に跳ね返ってきた。
「バリアー!!」
リサはまた呪文を唱える。すると、今度はワタルがガラスに包み込まれた。
反射したビームはそのガラスに当たり消えてしまった。
そのリサの姿、やっていることはまるでサーカスの様だった。
「すごい!!」
「これぐらいは朝飯前よ。」
「でも、何でこれだけの実力があるのに闇の住人には勝てないんだ?」
「最近のアイツ等はかなり強くなってきているの。そして毎日毎日、姿を現すからね。
さすがに、魔力だって無限にある訳じゃないのにこんな状況で圧勝できるわけないわ。」
「そうなんだ。でも、俺は攻型だし大丈夫か。」
「闇の住人を舐めてたら死ぬわよ。」
リサは獣の様な目でワタルを見た。
「え・・・」
「実際殺された人が何人もいるのよ。当然、魔法使いだって私達だけじゃないんだしね。
前は、20人だった魔法使いも今じゃ6人に減ったらしいの。」
「じゃあ、もっともっと特訓をして強くならなかちゃ駄目なのか。」
「そうよ、私だって猛特訓してるの。」
「そうなのか。じゃあ、俺まだ未熟者だし・・・一緒に・・・特訓しないか?」
ワタルの声は次第に小さくなるがしっかりとリサの耳に届いた。
リサの耳には"一緒に"と言う言葉が深く響いた。
(一緒にって・・・前のワタルはこんなこと言わなかったのに・・・でも、うれしい。)
「いいわよ、これから辛いことがおきるだろうけど一緒に乗り越えようね。」
「ん・・・い・・・一緒にな・・・」
「じゃあ練習再開よ!」
リサの声と共に二人の特訓は再開された。



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